投資界隈は「インデックス投資が最強だ!」という声で溢れています。
かくいう私も、インデックス投資をコアとして投資をしています。
しかし、なぜインデックス投資が良いのかを理解した上で実行している人は案外多くありません。
また、インデックス投資の理論的な背景となっている現代ポートフォリオ理論に触れる発信者もほとんどいません。
この記事では、インデックス投資がほとんどの人にとって最善の投資戦略である理由を、しっかりと理論を踏まえつつわかりやすく解説できればと思います。
そもそもインデックス投資とは?
インデックス投資とは、時価総額加重平均で重み付けをし、上場しているすべての銘柄に投資する手法です。
この説明だとわかりにくいので、例で説明します。
この世界に3つしか会社が存在しないとします。
時価総額(≒その企業の価値(規模))はAは60億円、Bは30億円、Cは10億円です。
もちろん実際には不可能ですが、仮にすべての会社の全株式を買い占めたとすると、以下のようなポートフォリオとなります(A=60%, B=30%, C=10%)。
この時の比率が時価総額加重平均です。
この比率で株式を保有する投資信託やETFに投資することをインデックス投資と言います。
補足:
実際には数え切れないほど多くの上場企業が存在するため、個人がいちいちこんな計算をしてそれぞれの銘柄を買い付けるなんてことは不可能です。
そこで、信託報酬を支払う代わりに時価総額加重平均での運用を代行してくれるインデックスファンドが登場しました。
現在では、「〇〇投資信託」のようなインデックスファンドを1つ選んで投資するだけで、個人でも手軽にインデックス投資を行うことができます。
信託報酬が0.1%を切るファンドも多く登場しており、この信託報酬の低さもインデックス投資の魅力です。
現代ポートフォリオ理論の概要
では、本題の「なぜインデックス投資が良いのか?」に答えていきましょう。
インデックスファンドの背景には現代ポートフォリオ理論という理論があり、これは主にハリー・マーコウィッツが作り上げたものです。
彼はこの功績でノーベル経済学賞を受賞しています。ノーベル賞が認めた理論というわけです。
この記事では要点や結論だけをかいつまんで説明していきますが、詳しく知りたい方はWikipediaを参照してください。
効率的フロンティア
各銘柄ごとに、横軸にリスク、縦軸にリターンをとったものをリスク・リターン平面といいます。
※金融用語としてここで使っている「リスク」は、一般に使われているような危険度を表すものではなく、値動きの激しさです。
短期国債のように値動きの穏やかなものは「リスクが小さい」、上場魔もない小型株のように値動きが激しいものは「リスクが大きい」と言います。
同じリターンが得られるならば、リスクは低い方がいいに決まっています。
いろいろと計算すると、各リターンごとの最小リスクは以下の(1)式で表せます。
それをプロットしたのが図中の青線です。
ここで、青線の中でも破線の所と実線の所を比較すると、実線の方が同じリスクでより高いリターンを得られることがわかります。
ここまでのことから、青線の実線の部分のどこかを選ぶと最も有利であることがわかります。
では、この中のどこを選べば良いのでしょうか?
接点ポートフォリオ
ここまでは、リスクのある株式のみでポートフォリオを組む(投資比率を配分する)場合の最適解を考えました。
ですが、市場には先進国の国債など、リスクがないと言ってしまっても差し支えのない資産も存在します(これを無リスク資産と言い、反対に株式などリスクのある資産を有リスク資産といいます)。
有リスク資産と無リスク資産でポートフォリオを組む場合の期待リターン(利回り)は、計算の結果以下のようになります。
これは無リスク資産のリスクとリターンの位置()から青線と交わるように伸ばした直線を表すので、傾きが大きいほど少ないリスクで大きなリターンを得ることができます。
※リスク・リターン平面での傾きは「リターン÷リスク」と表せることから、傾きが大きいほどリターンは大きく、リスクは小さいことがわかるかと思います。
そして、傾きが最大になるのは青線とから伸ばした直線の接点です。
これを接点ポートフォリオと呼び、ここまでのことから接点ポートフォリオが最適なポートフォリオだということがわかります。
市場ポートフォリオ
接点ポートフォリオが最適なポートフォリオだということが示されましたが、どうすればこのポートフォリオに投資することができるのでしょうか?
この疑問にはCAPM理論が結論を用意しています。
CAPM理論では以下の2点を前提としています(厳密には違いますが、この2点に集約しても理解する分には問題ないと思われます)。
・投資家は全員合理的である
・投資家は全員、すべての同一の情報を得る
そんなわけないだろ!となるかもしれませんが、大体正しいと言っていいようです。
この前提に立つならば、なんと接点ポートフォリオは最初に説明した時価総額加重平均で組んだポートフォリオに一致します。
つまり、時価総額加重平均ポートフォリオで運用してくれるインデックスファンドを買うことが、最も取ったリスクに対するリターンの高い(パフォーマンスのいい)投資ということになります。
実際に過去数十年において、インデックス投資はおよそ年平均7%(幾何平均)の利益を上げ、証券会社の機関投資家や年金基金などの”投資のプロ”の8割に勝ち続けています。
インデックスファンドを買って放置しているだけで、長期的には年利7%程度を得ることができ、投資のプロの8割に勝てるのなら、十分割の良い投資と言えるのではないでしょうか?
トービンの分離定理
インデックスファンドは資産のすべてを株式で運用します。
インデックスファンドが良い投資先だと理解したとしても、「100%株式で運用するなんて怖すぎる!」、逆に「年利7%じゃあ全然物足りない!もっと儲けたい!」という声もあるかと思います。
最後に、こういった場合にどうすれば良いのかを説明して理論の解説を終わりにしたいと思います。
まずは先程出てきた以下の図を思い出してください。
先程の説明では青線と黒い直線の接点を選んだ場合の説明をしましたが、実は黒い直線上ならば、どこでも選ぶことができます。
以下のように、接点の左右の赤丸のような位置を選ぶことができるわけです。
ここで、接点はもちろん100%インデックスファンドに投資する場合です。
接点の左側の赤丸はインデックスファンドと国債などの無リスク資産を組み合わせた場合であり、リターンが下がる代わりにリスクも低くなります。
接点の右側の赤丸は借金をして(レバレッジをかけて)インデックスファンドを買う場合で、リターンが上がる代わりにリスクも大きくなります。
同一直線状ならばどの点でも傾きは等しいので、直線上のどの点を選んでもリスクとリターンの比は同じです。
つまり、どれだけリスクを取るかに関わらず、リスクとリターンのバランスが最も良いのは、やはり以下のから伸ばした直線が青線と接するときです。
この接線上から好きなところを選べば良いことになります。
結局どうすれば良いのか?
ここまでのことをまとめると、以下の結論になります。
おすすめのインデックスファンドは?
単にインデックスファンドを買え!と言われても、どうすればいいかわからないと思います。
ここではおすすめを紹介します。
前提として、インデックスファンドには全世界の会社の時価総額加重平均となっている「全世界株式」と呼ばれるものと、米国の会社の時価総額加重平均となっている「米国株式」と呼ばれるものの、大きく2つがあります。
現代ポートフォリオ理論が出した最適解は、すべての株式の時価総額加重平均ポートフォリオに投資することです。
ですから、より現代ポートフォリオ理論に忠実に運用されているのは全世界株式の方です。
そのため、全世界株式ファンドの方がおすすめです。
そして、全世界株式ファンドの中でも以下が一番オススメできます。
私の知る中では、手数料や流動性、どのネット証券でも買えるか、他の証券会社に移管できるかなど、様々な観点で見た時に最も優れたファンドです。
紹介記事を書きましたので、ぜひご確認ください。
準備中
注意点
窓口で投資信託を買うと、無駄な手数料を支払う羽目になります。
必ずSBI証券、楽天証券、マネックス証券など、手数料の安いネット証券で買ってください。
私のおすすめはSBI証券です。
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NISA制度について
NISA口座でインデックスファンドを買えば、1人あたり買付額の1800万円までは譲渡益などのすべての税金が非課税となります。家族が2人なら、3600万円まで非課税です。
使わない手はありません。必ず使ってください。
まとめ
今回解説した理由から、私はすべての投資家はインデックスファンドをポートフォリオの主軸に据えるべきだと考えています。
その上で、興味がある人は個別株投資などでインデックス投資を超えるリターンを狙うといいのではないかと思います。私もそうしています。
参考になれば幸いです。