こんにちは。
今回は、割安な優良企業株に分散投資できるETF、MOATについて、私がMOATに投資することにした理由と、このETFがどのような審査基準で構成銘柄を決めているのかを分かりやすくまとめたいと思います。
私自身、MOATに惹かれ、どんな方法で「割安な優良企業株」を選んでいるのかを調べた際、ネット上に(ネット外でも)あまりにも情報がなかったため、自力で英語の資料を読んで理解しました。
その結果、このMOATがとんでもない優良ファンドだということが分かり、私自身も全資産の約15%をこのETFで運用することに決めましたので、調べて分かったことを備忘録としてここに残します。
2023/10/02追記:この記事でMOATをおすすめしてから現在までの約1年間で、MOATはS&P500を上回る上昇を見せています。
昨年英語の資料をものすごい時間をかけて読み込んで調査し、記事で紹介したETFが、紹介後S&P500を軽く凌駕しています。労力をかけたかいがありました。
— MIMO🗿 (@M_I__M_O) 2023年10月1日
【MOATへの投資を決めた理由とMOATの銘柄選定フローの解説】https://t.co/2sOQS0vV7N pic.twitter.com/DFO6zBA2dr
【ETF】MOATとは
moatという英単語は日本語で「堀」のことで、ここでは他社の追随を退け、自社の利益を守ってくれる「経済的な堀」のことを意味します。
この経済的な堀、"economic moat"という概念を提唱したのは、世界長者番付第5位で世界一の投資家と称されるウォーレン・バフェット氏です。
同氏は他社に真似できない、強固で分厚い”経済的な堀”に守られた事業を持つ企業の株を、一時的に割安もしくは適正な株価となった時に大量に買うことで14兆円もの資産を築きました。
以下は”経済的な堀”のことを深く学べる良書ですので、おすすめです。
私はウォーレン・バフェット氏のこの手法が本質的で、アクティブ運用でこれに勝る手法はないように思われたため、この手法を取り入れることにしました。
ただ、私はそこまで経営や金融、経済に詳しいわけではないため、バフェット氏と同じように個別銘柄に集中投資して利益を上げることは、十中八九できません。
そこで、堅牢な経済的な堀を持つ企業に分散投資できるETFはないのか?と調べたところ、今回取り上げているETF、MOATにたどり着きました。
このETFは、大まかに以下のルールで運用されています。
- 分厚い強固な堀を持つ企業を選定
- その中で割安度上位40社の株を買い、上がり切ったら売る
まさに私が求めていたものです。
設定来のリターンは、なんとS&P500を上回っています。
成績の良い期間を切り取ったわけでは決してなく、S&P500を下回っていたのはたったのおよそ1年半のみでした。
(MOAT:オレンジ、S&P500:ブルー)
理論が大いに賛同できるもので、実際の運用成績も殆どの期間で市場平均を上回っているため、このETFの商品設計に問題がなければ自分のポートフォリオに加えることにしました。
この記事は、その調査結果です。
参考資料
ETFであるMOATの原指数である「Morningstar Wide Moat Focus」を管理しているMorningstarの、この指数についての公式ページからダウンロードした文書と、「Morningstar Wide Moat Focus」に連動するETFであるMOATを販売・運用しているVanEckの公式ページを参考にしました。
Morningstar Wide Moat Focus 公式ページ
Construction Rules for Morningstar Wide Moat Focus Index
(Morningstar Wide Moat Focus Indexの構築ルール)
http://morningstaradvisor.com/uploaded/pdf/widemoat.pdf
Overview(概要)
Reconstitution Summary(再構成まとめ)
銘柄選定フロー概要
Morningstar社の資料によると、「Morningstar Wide Moat Focus Index」は以下の流れで運営されているようです。
- 選定元は米国株の97%をカバーする「Morningstar US Market Index」
- 時価総額下位3%、日次平均出来高500万ドル未満の銘柄を除外
- 強固で幅の広い「経済的な堀」を持つ企業を選定
- 選定銘柄から、割安または適正な株価となっている銘柄上位40銘柄を絞り込む
- 選定された銘柄を均等な比率で組み入れ
- ポートフォリオを2つに分け、時期を四半期ずらして年各2回入れ替え
詳しく説明します。
1.選定元は米国株の97%をカバーする「Morningstar US Market Index」
ETF・MOATの原指数である「Morningstar Wide Moat Focus Index」は、米国株の97%をカバーする「Morningstar US Market Index」から選出されます。
2.時価総額下位3%、日次平均出来高500万ドル未満の銘柄を除外
長期的な実績がない、もしくは成長余地が少ないと考えられる銘柄を除外するためと思われます。
3.強固で幅の広い「経済的な堀」を持つ企業を選定
「経済的な堀」とは先述の通り、他社の追随を退け、自社の利益を守ってくれる障壁のことですが、それには4つの分類があると書いてあります。
- 無形資産
- 顧客の乗り換えコスト
- ネットワーク効果
- コストの優位性
1.無形資産
例えば、大手製薬会社がこれに当たります。
この分野では国の認可がそう簡単には下りないので、既存の企業の利益を脅かす新規参入者が極めて少なくなります。
かなり強力な経済的な堀と言えるでしょう。
2.顧客の乗り換えコスト
大手銀行がこれに当たります。
新規に口座を開く若い世代はネット銀行を選ぶ割合が増えてきていますが、すでに大手銀行に口座を持っている人は、普通はわざわざ申込用紙を手書きで何枚も書いてまで、数百円の振込手数料を減らしたり、ネットバンキングを使うために銀行を乗り換えたりはしません。
こういった乗り換えコストの高さも、経済的な堀と言えます。
3.ネットワーク効果
これはMicrosoftが典型でしょう。
Microsoftが販売するOfficeソフトが他社にシェアを奪われる可能性は、限りなく0に近いと言えます。
いくら他社のソフトのほうが高性能で無料だとしても、自分以外の全員がMicrosoftのOfficeソフトを使っていて共有が全くできないなら、それを使う人なんていないでしょう。
これがネットワーク効果で、ユーザーが多いほど価値が高まるビジネスでよく見られます。
4.コストの優位性
例えば、マイナーですが、砂利メーカーはこれに当たります。
砂利は重さの割に値段が安く、遠くまで運搬すると採算が取れません。
結果、需要の旺盛な地域の近くにある砂利メーカーの一人勝ちになります。
さらに、家の横に採石場ができて欲しい人なんていませんから、新たに採石場を作ることも難しいため、新規参入者も皆無です。
4.選定銘柄から、割安または適正な株価となっている銘柄を絞り込む
強固な堀を持つと判定された企業の中から、株価が割安または適正な水準になっているものを探します。
割安度は以下で表し、もちろん値が小さいほど割安です。
株価/適正株価
適正株価は将来見込まれる利益を現在価値に割り引いて合計する、オーソドックスな算出方法が採用されているようです。
※補足説明:
利回りを5%であるとすると、現在の1万円は1年後には1万円×(1+0.05)=10,500円になりますから、この計算を逆に行えば、1年後の1万円の現在の価値は、1万円÷(1+0.05)=9,524円であるということになります。このような計算を行うとき、仮定としておいていた利回りの5%のことを、割引率といいます。
引用元:割引率 | 用語集 | 企業会計ナビ | EY Japan
将来見込まれる利益は、Morningstarの100名以上のアナリストが、経済的な堀の規模や効果、また業績などから算出します。
彼ら、特にMorningstarのアナリストは、先述の以下の本を読めばわかるのですが、経済的な堀のスペシャリストです。
その他の業績などの分析も、私なんかでは彼らには絶対に勝てません。
実際に市場平均を上回るリターンを10年近くに渡って上げ続けていますし、これについては信用できるでしょう。
5.選定された銘柄を均等な比率で組み入れ
ここまでで絞り込んだ、強固な経済的な堀を持ち、なおかつ割安な銘柄のうち、割安度が上位40位の銘柄を、均等な比率でポートフォリオに組み入れます。
S&P500を始めとする殆どのETFは時価総額加重平均型であるのに対して、珍しいアセットアロケーションですね。
6.ポートフォリオを2つに分け、時期を四半期ずらして年各2回入れ替え
完成したポートフォリオを2つに分け、一方は3月と9月、もう一方は6月と12月に再審査を行い、組み替えます。
4半期ずつに半分が組み替えられる、よくできた仕組みだと思います。
銘柄入れ替えの条件
ここで、銘柄入れ替えの条件を見ていきましょう。
上の画像はつい先日、2022/09/16の入れ替えの報告書で、右側の●が並んでいるところが入れ替え理由になります。
経済的な堀の価値が低下した場合
まずはわかりやすく、経済的な堀の効果が下がったり、侵食されてきている場合です。
どう考えても除外するべきですね。
今回除外された10銘柄のうち、この理由で除外されたのは1銘柄のみです。
割安感がなくなった場合(株価が上がり切ったと思われる場合)
割安だった株が順調に上昇し、株価/理論株価の値が十分高くなったものは除外する(売り抜ける)という意味だと考えられます。
この理由で除外されたのは7銘柄です。
過去12ヶ月(1年)の株価の勢い
曖昧な表現ではっきりした基準はわかりませんが、めちゃくちゃに下落して、今後さらに下がりそうな銘柄を除外する、などのことかと思われます。
この理由に該当するものは今回はありませんでした。
その他
今回は”Failed MarketValuePercentile”と注釈があり、おそらく株の市場価値を見誤った、というような意味だと思います。
こちらは2銘柄です。
ETF【MOAT】と【Morningstar Wide Moat Focus Index】はきちんと連動しているのか?
最後に、ETF「MOAT」と原指数である「Morningstar Wide Moat Focus Index」はきちんと連動しているのかの確認です。
MOATを運用するVanEckの公式ページには、「Morningstar Wide Moat Focus Index」に連動するように運用する、とあります。
ただし、いくら連動を目指すとは言っても、実際に指数と乖離していては意味がありません。
そこで、この2つの相関係数を計算したところ、約0.9999と出ました。
申し分ない数字で、ほとんど100%連動していると言えます。
チャートもほとんど重なっています。
この2つはほとんど完璧に連動していると言って良いでしょう。
調査結果
公式ページにある文書をすべて読んだ結果(今回引用しなかった文書も含めて全て読みました)、この指数の運営に引っかかる点は特になく、むしろ「なるほど」と思わせる、素晴らしい設計だと感じました。
アクティブファンドの8割はインデックスファンドに勝てないと言われていますが、自分がそのアクティブファンドの運用方法を隅から隅まで理解して納得し、市場平均に勝てると確信が持て、実際の運用成績も市場平均を上回っているファンドであれば、私はポートフォリオの一部としてなら投資しても問題ないと考えています。
今回の調査の結果、私はMOATをポートフォリオに15%程度組み入れることにしましたが、あなたはどうしますか?
是非自分の頭で考えて、自分なりの結論を出してみてください。